アジャイル型開発(Agile Development)は,Scrum,XP等の6つ以上の反復型フレームワークやプラクティスから構成された概念的総称で,主にITシステム・ソフトウェア開発プロジェクトで使用されてきました。2001年に17人の開発者たちによって作成されたアジャイルマニフェストでは,4つの価値を原則とする開発手法をアジャイル型と称しています。
- プロセスやツールよりも個人と対話
- 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェア
- 契約交渉よりも顧客との協調
- 計画に従うことよりも変化への対応
また、研究者(アカデミア)のHighsmithはアジャイルプロジェクトマネジメント(Agile Project Management (PM))の目的を,「顧客に,コスト制約とスケジュール制約の中で,革新的な結果を,確実に提供する」ことと述べています。また,不確実性に適応するための能動的なリスク対応が,アジャイル型手法の主な狙いと論じています。アジャイル型の導入検討にあたり、上述のソフトウェア技術者視点の価値原則に加えプロジェクト管理者視点の不確実性への対応といった、多面的な目標設定が必要な場合もあるかもしれませんね。
アジャイル型活用の現場ではどうでしょうか。2022年のdigital.ai社の約3300名の調査(回答者は北米、ヨーロッパ、アジア等)によると、約80%の回答がアジャイル型を主として活用しているとのことです。その活用目的としては、ソフトウェア開発面では時間通りの納品(On-time Delivery)、組織のビジネス面ではビジネスゴールの達成(Digital Transformation(DX)等のBusiness Objectives Achieved)が回答の大半を占めています。
当社では、事業上の目的や外部環境、プロジェクトの性質に応じて、プロジェクトマネジメントの手法(アジャイル型、ウォーターフォール型)を体系的に使い分ける、プロジェクトマネジメント方法論をアドバイス、またその実行を支援しています。アジャイル型の導入や活用にあたって、まずその導入目的や成功の基準が明確になっているか、アカデミアと現場の双方の知見・経験をもとにヒアリングし、方法論や進め方をアドバイスするようにしています(手段としてのアジャイル型導入を、安易に目的化しないように心がけています)。
参考文献:
Beck, K.,Beedle, M.,Van Bennekum, A.,Cockburn, A.,Cunningham, W.,Fowler, M.,Grenning, J.,Highsmith, J.,Hunt, A. and Jeffries, R.: “Manifesto for agile software development, ” http://agilemanifesto.org, 2001. (2024年1月1日アクセス)
Dybå, T.and Dingsøyr, T.: “Empirical studies of agile software development: A systematic review, ” Information and software technology, Vol. 50, No. 9, pp. 833-859, 2008.
Highsmith, J.: Agile project management: creating innovative products, Pearson Education, 2009.
Digital.AI: “16th State of Agile Report,” https://digital.ai/resource-center/analyst-reports/state-of-agile-report/, 2022. (2024年1月1日アクセス)