PMI InfinityのPMエージェントとGoogle WorkspaceのPMペルソナスキルから考えるPMOの役割

PMI Infinityの文書フレームワークとGoogle Workspaceの業務操作を、意思決定とトレーサビリティでつないだ比較図 PMO

当社が関わるプロジェクトでは、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)や開発チームだけでなく、顧客側のプロジェクト事務局や、経理・調達といった業務ワーキンググループでも、AIエージェントを使う場面が見られるようになりました。ただ、同じ「AIエージェント活用」といっても、動いている仕組みとその役割は一様ではありません。本稿では、国際的なプロジェクトマネジメント団体であるPMI(Project Management Institute)が提供するPMI Infinityの5つのPMエージェントと、Google Workspace上の操作を担うPMペルソナスキルを取り上げ、当社の検証環境で確認できた動きも交えながら、両者の違いを整理します。

PMI Infinityはプロジェクト文書の型を整えるPMエージェントであり、Google WorkspaceのPMペルソナスキルは、表への追記や予定登録といった操作手順をAIに与えるものです。この違いを起点にすると、生成された情報をどう検証するか、プロジェクト固有のカスタムスキルをどう設計するか、プロジェクト管理計画とコミュニケーション計画に何を明記するか、というところまで話がつながっていきます。内容は2026年7月時点のものです。

PMI Infinityは5つのPMエージェント

PMI Infinityは、PMI会員向けに提供されるPM向けのAIサービスです。検証した時点では、画面も回答も日本語で利用できました。アプリのAgentsページには、プロジェクトチャーター、RACIチャート、リスクマネジメントプラン、非機能要件、研修カリキュラムといった文書の作成を支援する5つのPMエージェントが用意されています。

たとえば新しいプロジェクトを立ち上げるとき、目的、範囲、関係者、主なリスクをどの順番で整理していくか、手が止まることがあります。PMI Infinityは、PMIの標準や知識をもとに必要な項目を並べ、文書の形にするところを助けてくれます。回答には参照元が付くため、なぜその内容が出てきたのかをたどれるのは、実務で使ううえで安心できる点です。

一方で、今回確認した専用エージェントの中心は、あくまで文書作成です。スケジュールを計算したり、課題表を更新したりするものではありません。PMI Infinity全体には資料を読み込んで分析する機能も案内されていますが、今回はその生成物の品質までは検証していません。実際に触った範囲でいえば、PMI InfinityはPMの代わりにプロジェクトを進めるものというより、PMが文書を作り始めるときの土台を用意するものだと受け取っています。具体的な使い方は、PMIの公式学習動画シリーズでも確認できます。

Google WorkspaceのPMペルソナスキルはWorkspace上の操作を引き受ける

Google WorkspaceのPM向けスキルは、PMI Infinityとは役割が異なります。Google Workspaceを操作するAIに、何をどの順番で行うかを伝える「作業手順書」に近いもので、実際の指示内容は公開されているスキル本体で確認できます。手順には、課題表への追記だけでなく、関係者への状況報告メールや、メンバーを招いた定例の設定まで含まれています。

ただし当社の検証では、認証が利用者個人の単位で行われ、見えるのは自分のメールやカレンダーと、共有された範囲の資料に限られました。Googleタスクにも、担当者を割り当てる仕組みはありません。プロジェクト全体の情報を一か所に集めるというより、一人分の作業を進めるための仕組みだと受け取っています。このスキルを使うと、AIはGoogle Sheetsの課題表へ行を追加し、Google Calendarに会議を登録し、Driveで資料を探し、GmailやGoogle Chatで連絡します。判断の方法を教えるというより、決められた作業を実行するための仕組みです。

検証では、課題管理シートへの追記が正確に動きました。日本語や記号も崩れず、複数の課題をそのまま追加できます。人が表を開き、行を探して入力する仕事を、そのままAIに渡せるところまで来ているわけです。ただ、当初思い描いていたものとは、少し違いました。プロジェクトチーム全体をまとめて管理してくれる仕組みを想像していたのですが、認証が利用者個人の単位で行われる以上、実際には、プロジェクトメンバー個人のタスクを、いわばその人専属のプロジェクトマネージャーのように管理してくれるもの、という受け取り方が近いでしょう。したがって、負担を減らせるのは、あくまでPM個人が抱える作業のほうです。毎週の決まった更新や、会議前の資料準備のように手順が決まっている仕事であれば、その一人分を任せられる可能性があります。

なお、公開リポジトリには、gwsは正式にサポートされたGoogle製品ではないと明記されています(“This is not an officially supported Google product.”)。現在も開発中のため、業務で継続して使う場合は、更新のたびに動きを確かめる必要があります。

AIエージェントやスキルの生成情報の検証プランをプロジェクト管理計画書に明記していく

〖現場の事例〗タスクを取得できなかったのに「0件」に見えた

当社の検証環境で、会議やメール、タスクの状況をまとめる機能を試したところ、会議の件数と未読メールの件数は取得できたのに、タスクの取得ではエラーが起きました。困ったのは、その結果が一見すると「未処理タスクは0件」と読めたことです。本当にタスクがないのか、取得できなかったために0件と出たのか、画面だけを見ていると区別がつきません。プロジェクトの週次報告で同じことが起きれば、「課題なし」と報告したあとになって、実はデータを取得できていなかった、と気づくことになりかねません。AIが出した数字がきれいに見えても、元の情報を正しく読めたとは限らないわけです。

前回の記事では、AIエージェントをPMOに組み込むには、AIが確認することと人が確かめることを分ける必要があると書きました。今回の検証で見えたのは、その手前に「本当に情報を取得できたか」を確かめる工程がもう一つ要る、ということです。これを報告者の注意力だけに委ねてしまうと、プロジェクトごと、報告者ごとに扱いが変わってしまいます。取得できたかどうかをどう判定し、うまくいかなかったときにどう扱うかまでを、品質管理やコミュニケーション管理の手順としてプロジェクト管理計画書に書いておく。ここまで決めて初めて、AIが出した数字を安心して報告に使えるようになります。

PMI InfinityとGoogle WorkspaceのPMペルソナスキルの比較から見えてくるPMOの役割とは

検証の最後に、ID、課題、起票部門、状態、期限という列を持つ課題管理シートを作り、二件の課題を登録しました。Google Workspaceのスキルは、指示した内容を正確に書き込みます。ただ、ここでできたのは「記録」であって、「管理」までできたわけではありません。

現場で「予定より遅れている」という情報が出たとき、それを進捗欄に書くだけでよいのか、担当者と期限を置く課題にするのか、将来起こり得るリスクとして見るのか、追加費用や仕様変更を伴う変更要求として扱うのか。プロジェクトへの影響によって、情報の行き先は変わります。すべてを課題にすれば一覧は膨らみ、弱い兆候を単なる報告として流せば、後工程で手戻りになります。PMOが決めるべきなのは、表の列だけではありません。どの条件で課題やリスクへ切り替えるか、誰が内容を確認するか、どの会議体で判断するか、決定を要件・仕様・テストへどう戻すか。この流れが決まって初めて、一行の記録がプロジェクトの意思決定につながります。

PMI Infinityは文書の型を用意し、Google Workspaceのスキルは決められた操作を進めます。その間にある「管理のルール」が曖昧なままでは、AIは曖昧な情報を速く書き写すだけです。一方、課題・変更・リスク・決定のつながりが設計されていれば、AIは候補を拾い、記録し、確認漏れを知らせるところまで担えます。AIエージェントによってPMOが減らせるのは、転記や定例更新に使う時間です。ただし、PMI InfinityやGoogle Workspaceに用意されたスキルだけで、各プロジェクトの管理がそのまま回るわけではありません。どの情報を拾い、誰が確認し、どの条件で課題・リスク・変更として扱うかは、プロジェクトごとに異なるからです。

そこで必要になるのが、既成のAIエージェントやスキルを選ぶことに加えて、プロジェクト固有の管理ルールをカスタムスキルに落とし込むことです。AIエージェントが行う作業、人が判断すること、業務メンバー・システム開発メンバー・テストメンバーへ確認することを、プロジェクト管理計画とコミュニケーション計画の中で決めておく。今回の二つを比べて見えたのは、AIエージェントの導入とは、ツールを追加することではなく、PMOがこの境界と連携の流れを設計することだ、という点でした。

利用方法と公式情報

ここからは、実際に試したい方に向けた情報です。サービスや設定方法は変わる可能性があるため、導入時には各ページの最新情報をご確認ください。

PMI Infinity

PMI InfinityはPMI会員向けに提供されています。会員でない場合は、30日間のメンバーシップ無料トライアルが案内されています。ログイン後、Agentsページから各エージェントを選べます。

Google WorkspaceのPMスキル

Google WorkspaceのPMスキルを使うには、最初に、Google Workspaceを操作するコマンドラインツールgwsをインストールします。npmを使う場合はNode.js 18以上が必要です。

npm install -g @googleworkspace/cli

次にGoogle Cloudで利用する機能と権限を設定し、自分のGoogleアカウントでログインします。gws auth setupを使う場合は、別途gcloud CLIが必要です。導入していない場合は、Google Cloudコンソールでデスクトップアプリ用の認証情報を作成し、gws auth loginから進めます。組織で利用する場合は、事前に情報システム部門へ確認することをおすすめします。

gws auth setup
gws auth login

PM向けスキルは、次のコマンドで追加できます。

npx skills add https://github.com/googleworkspace/cli --skill persona-project-manager

当社のサービスについて

タクスフィアでは、DX・基幹システム刷新におけるPMO支援と、AI活用の運用設計を行っています。AIエージェントを入れる、あるいは試すときに一つの手がかりになるのは、クリティカルパス、つまりプロジェクトの完了時期を左右する一連の作業に関わるリスクです。ここには、より生産的で、より正確な確認の手立てが要ります。とくに大量のデータを確認する場面では、どこに焦点を当てるのかを明確にし、それをコミュニケーション計画に組み込んで、ステークホルダーの理解を得ておくことが欠かせません。そのためには、AIエージェントの利用ポリシー、セキュリティ、個人情報保護といった観点にも配慮する必要があります。こうした計画を立てておくことこそ、PMOに求められる役割です。

そのうえで、AIエージェントに与える権限や、エラーが起きたときの扱いを情報システム部門やプロジェクトメンバーと決め、既成のスキルで足りない部分は、プロジェクト固有のカスタムスキルとして設計し、プロジェクト管理計画とコミュニケーション計画へ組み込んでいきます。

AIを導入すること自体が目的ではありません。PMやPMOが判断に使える情報を、安心して受け取れる状態を作ることが目的です。AIエージェントに何を任せ、どこから人が確認するかを整理したい場合は、お問い合わせフォームよりご相談ください。

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