グローバル案件の手戻りを減らす「要求管理とコミュニケーションのDX」

グローバルPMOで画面プロトタイプを確認する国際チーム グローバルPMO

海外拠点を含むシステム開発では、要件の小さなずれが後工程の手戻りにつながることがあります。要求管理とグローバルPMOの観点から、早い段階で認識差を見つける工夫を紹介します。

昨年までの大手電機メーカーにおけるSaaS開発におけるGlobal PMO支援事例では、Notion上に要求、背景、決定事項、未決定事項を日英でまとめていました。議事録も残している。タスクも管理している。日本側から見ると、「ここまで書いていれば、かなり分かりやすいはず」と思える状態でした。

ところが、米国側の開発者からは、細かな確認が戻ってきます。「この画面は誰が、どのタイミングで使うのか」「このボタンを押した後、次に何が起きるのか」「この項目は必須なのか、後から変更できるのか」。要求としては書いてある。けれども、実際の画面や操作を見ないと、使われ方まではなかなか想像しにくいのです。

これを毎回、通訳を通した会議で確認していくと、どうしても重くなります。質問の意図を確認し、回答を訳し、また確認する。時差もあります。日本側の夕方が、米国側にとっては早朝や夜になることもあります。画面の細部を一つずつ会議で説明するやり方には、やはり限界があります。

そこで、このプロジェクトでは、Figmaのプロトタイプと短い操作動画を組み合わせました。画面の動きをFigmaで見える形にし、米国側の開発者が「こういう使い方を想定しています」と短い動画を作る。日本側はその動画を見て、「そこは少し違う」「その流れでよい」「この条件だけ追加したい」と確認する。会議の場だけでなく、オフラインでも認識合わせができるようにしたのです。今回のインサイトはこういったグローバルPMOにおける、要求管理とコミュニケーションにおけるプロジェクト管理の「DX(Digital Transformation)」を概説します。

日英併記でも、利用場面までは伝わりにくい

海外メンバーが関わる案件では、日英併記で要求を残すことはとても大事です。用語のずれを減らせますし、後から見返すこともできます。Notionのようなツールで、背景や決定事項まで整理しておくことも有効です。

ただし、言葉をそろえれば、理解までそろうかというと、そこは少し違います。

例えば、「承認後に処理を進める」という要求があったとします。この一文だけでは、誰が承認するのか、どの画面で承認するのか、承認前にどこまで入力できるのか、承認後にどのデータが更新されるのかまでは分かりません。日本側では業務の流れを前提に読んでいても、海外側の開発者は画面遷移やデータ更新の観点から、別の完成形を思い浮かべるかもしれません。

これは語学力の問題ではありません。業務の背景、利用者の動き、例外時の判断、現場での使われ方は、文章だけでは抜け落ちやすいものです。英語として正しく書かれていても、使い方のイメージが共有されていなければ、開発者は自分の経験で空白を補うことになります。

デザインコラボレーションツールで米国のプロトタイプを見る

こういう場面で効いてくるのが、Figmaのようなプロトタイプです。完成した画面でなくても、画面の並び、ボタンの位置、入力項目、操作後の流れが見えるだけで、議論はかなり具体的になります。

文章で「一覧から詳細に遷移する」と書くより、実際に一覧画面を見せ、どの行を選び、どのボタンを押し、次にどの画面が開くのかを見せる方が早い。そこで初めて、「この項目は一覧に出した方がよい」「この操作は管理者だけにしたい」「この画面では編集ではなく確認だけにしたい」といった話が出てきます。

Figmaの良いところは、コメントが画面の該当箇所にひもづくことです。メールやチャットで「前回の画面の件」と書くよりも、どの部品について話しているのかが分かりやすい。開発者にとっても、修正すべき場所を把握しやすくなります。

短い動画で、時差を超えたデザイン仕様を確認する

もう一つの工夫は、短い動画でした。

米国側の開発者がFigmaのプロトタイプを操作しながら、「このユーザーはまずここを開き、この条件を選び、最後にこの画面で確認する」といった動画を作ります。長い録画ではありません。数分でよいのです。日本側はそれを自分たちの時間で確認し、気になる点をFigmaやNotionにコメントします。

このやり方にすると、会議の位置づけが変わります。会議で最初から説明を聞くのではなく、事前に動画を見て、ずれている点だけを持ち寄る。合っていればそのまま進める。違っていれば、早い段階で直す。

特に良かったのは、日本側が「説明した内容」ではなく、米国側の開発者が「どう理解したか」を見られたことです。相手が作った動画を見ると、こちらの意図がどこまで伝わっているかが分かります。これは、議事録を読むだけではなかなか分かりません。

グローバルPMでは、コミュニケーションを設計する

グローバルプロジェクトでは、会議を増やせば解決するとは限りません。むしろ、会議を増やすほど、関係者の負担が増えてしまうこともあります。

大事なのは、何を文章で残し、何を画面で見せ、何を動画で確認するかを分けることだと思います。Notionは、要求や判断の履歴を残す場所。Figmaは、画面や操作の認識を合わせる場所。短い動画は、相手がどう理解したかを確認する手段。それぞれの役割を分けると、会議に頼りすぎない進め方ができます。

PMOは、この流れを整える役割を担います。要求はどこに書くのか。画面の確認はどこで行うのか。動画で確認した内容は、どのように正式な要求や設計へ反映するのか。未決定事項は誰が、いつまでに判断するのか。こうしたルールが曖昧なままだと、せっかくのツールも情報の置き場が増えるだけになってしまいます。

手戻りは、完成してからではなく途中で見つける

手戻りを完全になくすことは難しいと思います。特に、国や組織をまたぐプロジェクトでは、後から分かることもあります。ただ、完成してから認識違いに気づくのと、Figmaや短い動画の段階で気づくのとでは、影響度合いが異なるでしょう。

画面を作り込む前なら、流れを直すだけで済むかもしれません。開発前なら、データ項目や権限の考え方を見直せます。テスト後に見つかれば、設計、実装、テスト、教育資料まで修正が広がることがあります。

だからこそ、グローバル案件では「分かりやすく説明したか」だけでなく、「相手がどう理解したか」を早く見ることが大切です。Notionで要求を残し、Figmaで画面を共有し、短い動画で使い方を確認する。この組み合わせは、そのための実務的な工夫の一つです。

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タクスフィア株式会社では、グローバルプロジェクト、ERP・SCM・PLMなどの基幹システム刷新、AI・SaaS開発に関するPMO、コンサルティング、研修を提供しています。

海外拠点との認識差が後工程で見つかる、時差のある会議が多すぎる、要求や判断結果が複数のツールに分散している。こうした課題について、現在の要求管理と会議の流れを確認し、どこから整えるべきかをご一緒に整理します。

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