PMI Infinityの活用事例8本を整理――PMOは生成AIをどこから使い始めるか

無限ループの左半分にPMの知識、右半分に生成AI、交点に人による検証を配置した概念図。ループ上の8つのノードがPMI Infinityの活用事例8本を表す。 プロダクトライフサイクルマネジメント

PMI(Project Management Institute)が公開している「PMI Infinity Learning Series」には、2026年7月時点で8本の動画があります。PMI Infinityは、PMIの標準や専門家によるコンテンツを参照しながら、プロジェクトマネジメントの質問、文書作成、資料分析などを支援するPM向けのAIサービスです。本稿では、公式動画8本の内容を日本語で整理します。

動画で扱われるのは、アジャイルチームの見積り、複雑なプロジェクトの要求収集、ERP開発、プロジェクト見積り、ビジネス分析、リスクマネジメント計画、複数案件の選定、ステークホルダー対応です。2024年に公開された6本は、PM知識や進め方を質問する使い方が中心でした。2026年の2本では、複数資料の比較、意思決定マトリクス、経営向け提案、配布用アンケートの作成まで扱っています。

8本を続けて見ると、AIの用途が「知識を得る」ことから「実務の成果物を準備する」ことへ広がっていることが分かります。同時に、PMOが管理すべき入力資料、評価基準、検証、説明責任も増えています。

PMI Infinity Learning Seriesで紹介されている8つの活用事例

公式動画8本の内容は、次のように整理できます。

  1. アジャイルチームの見積り
    プランニングポーカー、Tシャツサイジング、バケットシステム、アフィニティグルーピングを比較し、チームの協働や会議への参加状況を踏まえて見積り方法を検討します。
  2. 複雑なプロジェクトの要求収集
    技術、マーケティング、オペレーションの3つのワークストリームを想定し、インタビュー、ワークショップ、アンケート、文書分析を整理します。ステークホルダーインタビューの質問案や、システム連携を確認する方法も作成します。
  3. 複雑なERP開発プロジェクトの管理
    グローバル製造業向けERP開発を例に、厳しい期限、経験者不足、要求変更のリスクを整理します。開発の一部を外部委託する場合の利点とリスクも確認します。
  4. 複数年プロジェクトの見積り
    プロジェクトの複雑性、過去データ、時間制約、リスクをもとに、見積り方法の選定条件を整理します。その後、トップダウン見積りを実施する手順を作成します。
  5. プロジェクト計画へのビジネス分析の組み込み
    事業目標とプロジェクト計画をつなぐため、ビジネスアナリストとの協働、ステークホルダーへのインタビュー、観察、ペルソナ分析などを確認します。
  6. DXプロジェクトのリスクマネジメント計画
    新技術と既存システムを統合する大規模DXを想定し、初期リスク評価、組織のリスク許容度、従業員のスキル向上を検討します。PMI Standards+のリスク報告書テンプレートも利用します。
  7. 競合するプロジェクト提案の評価
    複数の提案書を読み込み、事業への効果、環境・社会・ガバナンス、財務的効果、効果が出るまでの時間を同じ枠組みで比較します。意思決定マトリクスと経営向けの提案を作成します。
  8. ステークホルダー対応と利用者からの意見収集
    新しいナレッジマネジメントシステムの導入を想定し、関係者を役割、関心、影響力、期待で整理します。アンケートやユーザビリティテストの実施時期を決め、配布用のアンケート文書まで作成します。

これらは、AIにプロジェクトの判断を任せる例ではありません。手法の候補を知る、質問案を作る、資料を同じ形にそろえる、比較すべき点を見えるようにする、といった判断前の準備に使っています。

2024年から2026年に、PMI Infinityの使い方はどう変わったか

公開時期で分けて見ると、最初の6本と後の2本では、PMI Infinityに任せている仕事の範囲が異なります。

2024年は、PM知識を引き出す使い方が中心

2024年に公開された最初の6本では、PMI Infinityへプロジェクトの状況を入力し、手法や進め方を質問しています。回答を受けて背景を追加し、さらに具体的な質問を重ねる流れです。

アジャイルチームの見積りでは、利用可能な手法を確認した後、チームの協働や会議参加に関する状況を加えています。要求収集では、一般的な収集方法を確認してから、技術ワークストリーム向けのインタビュー質問、システム間連携を探す方法へ話を進めています。リスク管理では、初期評価、対応策、報告書の順に質問しています。

この段階は、社内の機密資料を使わなくても試せます。架空のプロジェクトや匿名化した状況を使い、若手PMの学習、研修、会議前の準備に利用できます。一方、AIが挙げた手法を採用するかどうかは、過去データ、契約、チームの経験、期限などを踏まえて人が決める必要があります。

2026年は、複数資料の比較と成果物作成へ進む

2026年に追加された2本では、PMI Infinityへ複数の資料やプロジェクト情報を渡し、比較や成果物作成に使っています。

プロジェクト提案の評価では、複数の提案書を同じ枠組みで要約し、意思決定マトリクスを作ります。ステークホルダー対応では、関係者の整理から、意見を集める時期、質問内容、配布用アンケートまで一つの流れで作成します。

ここでは、AIは知識を説明するだけではなく、会議や経営説明に使う資料の準備へ入っています。ただ、比較表の結論は、評価基準と重みによって変わります。ステークホルダーの影響力や期待も固定されたものではありません。資料の版、欠落情報、分類の根拠をPMやPMOが確かめなければ、整った文書がそのまま誤った判断材料になることがあります。

PMIが紹介する5つの活用のヒント

PMIが2026年に公開した説明資料「Step Into PMI Infinity: From Demo to Doing」では、Infinityを実務で使うための5つのヒントを紹介しています。

  1. 複数の文書をアップロードする
    一つの資料だけでなく、関連する複数の文書を読み込ませ、内容の比較やリスクの洗い出しに使います。
  2. テンプレートのプロンプトに案件の情報を加える
    用意された質問文をそのまま使うのではなく、目的、制約、関係者など、対象プロジェクトの情報を追加します。
  3. プロジェクト文書を作成する
    PMIの知見を踏まえた文書を作り、画面上で確認してからダウンロードします。動画では、比較表、提案資料、アンケートなどの作成例が紹介されています。
  4. フォルダで案件ごとの情報を整理する
    資料、指示、やり取りをフォルダにまとめ、対象プロジェクトの前提を保ちながら作業を続けます。
  5. Infinity自身に、何ができるかを尋ねる
    取り組んでいる業務や困り事を伝え、どの機能や進め方が使えそうかを確認します。

最初からプロジェクトの全資料を読み込ませる必要はありません。まずはテンプレートの質問に案件の背景を加えるところから始め、文書作成や複数資料の比較へ進む方が、現場では扱いやすいでしょう。利用範囲を広げる際は、どの情報まで使うか、生成物を誰が確認するかもあわせて決めておく必要があります。

入力情報と生成結果の検証をプロジェクト管理計画書に明記する

PMIは、PMI Infinityへの入力と出力をAIモデルの改善には使用しないと説明しています。一方、利用規約では、出力に誤りが含まれる可能性があり、人が正確性と用途への適合性を確認するよう求めています。「安全な環境」という説明だけで、自社の機密資料を入力してよいと判断することはできません。自社の情報区分、利用規程、契約条件、情報システム部門の承認も確認する必要があります。

また、AIが作った比較表を誰が原資料と照合するのか、評価基準の変更を誰が承認するのか、見つかった懸念を課題・リスク・変更要求のどれとして扱うのかも決めておく必要があります。

こうした内容は、AI専用の操作手順だけでなく、プロジェクト管理計画書の品質管理、リスク管理、コミュニケーション管理、変更管理へ反映します。既存の会議体、課題管理、決定ログの中に、入力、検証、承認の流れを入れることで、AIが作った成果物を実際の意思決定へつなげられます。

利用方法と公式情報

PMI Infinityは、Web版とPMI公式モバイルアプリで提供されています。PMI会員向けのサービスで、会員でない場合には30日間のメンバーシップ無料トライアルが案内されています。機能や利用条件は変わる可能性があるため、利用時には公式情報をご確認ください。

当社のサービスについて

タクスフィア株式会社では、DX・基幹システム刷新におけるPMO支援と、AIをプロジェクト実務へ組み込むための運用設計を行っています。

生成AIをどの業務から試すか、どの資料まで利用するか、出力を誰が確かめるか、課題・リスク・変更・意思決定へどうつなげるかを、既存のプロジェクト管理計画に沿って整理します。ツールを入れることではなく、PMやPMOが判断に使える情報を、安心して受け取れる状態をつくることが目的です。

PMOで生成AIを使い始めたいが、対象業務や検証方法を決められていない場合は、お問い合わせフォームよりご相談ください。

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