訪問介護の「サービス提供責任者(サ責)」とプロジェクトマネジメント

アジャイルプロジェクトマネジメント

当社には訪問介護の現場を支える「サービス提供責任者(通称:サ責)」の仕事に関わっているメンバーがいます。今回はサ責についてプロジェクトマネジメント(PM)の視点から書いたメンバーのブログです(以下)。

サービス提供責任者(通称:サ責)は、ケアマネジャーとの調整、訪問介護計画書の作成、ヘルパーのシフト管理や指導、そして時には自らもケアに入るなど、その業務は多岐にわたります。「とにかく毎日がバタバタで、時間が足りない」と感じておられる方も多いのではないでしょうか。

介護の現場では、突発的なトラブルが日常的に起こります。先日も、電車が人身事故でストップし、ほとんどのヘルパーが出勤できないという事態が発生しました。サ責自身も出勤できず、あわてて別のサ責が担当することになったものの、やることは山積みで、どこから手をつけてよいのか分からず、現場は一時パニックに近い状態に陥ってしまいました。

このとき何が起きていたのかを少し整理してみると、課題はおおむね三つに分けられるように思います。一つは、急な人員不足によって業務が止まりかけ、出勤できたわずかなスタッフに負荷が集中したこと。もう一つは、利用者やケアマネジャーへの連絡・調整が追いつかず、情報伝達が遅れたこと。そして、交通機関のストップという比較的大きなリスクが事前に想定されておらず、リカバリープランが用意されていなかったことです。

PMと聞くと、IT業界や大規模な建設現場のものというイメージを持たれるかもしれません。けれども、限られた時間と人手のなかで最高の成果——利用者の安心な生活——を目指すサ責の仕事は、まさに一つの「プロジェクト」そのものではないかと思います。

臨機応変な「対応力」

介護現場は、予測のつかないことの連続です。先ほどの交通機関のストップもそうですし、ヘルパーが急に休む、利用者の状態が急変する、といったことも日常的に起こります。

PMには、起こりうるトラブルをあらかじめ想定して手を打っておく「リスクマネジメント」という考え方があります。あわせて、計画を固めすぎず、状況の変化に合わせて柔軟に軌道修正していく「アジャイル(俊敏)」な手法もあります。こうした考え方を応用できれば、急な事態にも慌てず、落ち着いて次の一手を打てるようになるといえます。

立場の異なる人をつなぐ「調整力」

サ責の仕事は、利用者やご家族、ケアマネジャー、現場のヘルパーなど、多くの関係者(ステークホルダー)の間に立って進めていくものです。

PMの世界では、こうした関係者それぞれの期待値を見ながら、円滑にコミュニケーションをとっていく手法が体系化されています。これを学ぶことで、「言った・言わない」のすれ違いを防ぎ、チーム全員が同じ方向を向いてケアに取り組みやすくなるのではないでしょうか。

属人化を防ぐ「見える化」

「あのサ責さんでないと現場が回らない」という状態は、一見頼もしく見えますが、組織としてはむしろ大きなリスクをはらんでいます。

PMの強みの一つは、業務の流れを言語化・標準化し、誰が担当しても同じ品質で再現できるようにしていく点にあります。サ責の方がPMの視点で業務を整理・共有していくことで、ヘルパー全体の育成が進めやすくなり、結果として事業所全体のサービス品質の底上げにもつながっていくと考えられます。

プロジェクトマネジメントとは、単なる管理のテクニックというより、限られた資源(ヒト・モノ・時間)を最大限に活かして、関わる人みんなを少しでも幸せにするための考え方だと私たちは捉えています。

当社のサービスについて

当社タクスフィア株式会社は、プロジェクトマネジメントに関わるコンサルティング、実行支援(PMO)、研修サービスを、さまざまな業界・団体にご提供しています。福祉・介護の現場で前述のような課題に向き合うサ責の皆さまにも、いくつかの形でお役に立てるのではないかと考えています。

一つは、人材育成のための研修です。リスクマネジメントやステークホルダーの調整、業務の見える化といったPMの考え方を、現場で使える形でお伝えし、サ責や現場リーダーの対応力・調整力を底上げしていくものです。

もう一つは、実行支援(PMO)と独自の方法論を通じた支援です。当社は、アジャイル型・ウォーターフォール型・ハイブリッド型のそれぞれに対応した独自のマネジメント方法論を持ち、手法に応じた品質チェックリストやWBS(Work Breakdown Structure)テンプレートを用いて、業務プロセスの標準化・見える化をお手伝いしています。先ほどの属人化の解消につながる部分です。

さらに当社では、独自の数理モデルに基づくプロジェクトマネジメントの自動化・AI化に関する研究にも取り組んでおり、実務と研究の両面からの方法論があります。

そして、福祉の現場に向き合えるのには理由があります。当社代表の今仁は、外資系IT企業や国内大手製造業に加え、社会福祉系のNPO等でも多くのプロジェクトマネジメント業務と人材育成に従事し、東日本大震災の復興支援プロジェクトのマネジメントも担当してきました。社会福祉士の資格も有しています。当ブログ(insight)でも、これまで「社会福祉におけるプロジェクトマネジメント」をテーマの一つとして取り上げてきました。

目の前の業務に追われる日々から一歩抜け出し、チーム全体をプロの手法でマネジメントしてみる。それだけで、現場の空気が少し変わってくるかもしれません。ご関心をお持ちいただけましたら、当社お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました